このサイトは------サーバー:ConoHa Wing 、CMS:WordPress 、WPテーマ:SWELL------を使用しております。

綾辻行人『Another』あらすじ、書評、感想、考察

「Another」表紙裏、作者・綾辻行人によるサイン
目次

綾辻行人『Another』の概要

スクロールできます
出版社角川書店
発売日単行本(ハードカバー)……2009/10/30
文庫本……2011/11/25
著者綾辻行人
ページ数単行本(ハードカバー)677ページ
文庫本(上)402ページ (下)384ページ

帯の裏より

その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―。1998年、春。夜見山北中学に転校してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい、何が起こっているのか?秘密を探るべく動きはじめた恒一を、さらなる謎と恐怖が待ち受ける…。

『Another』は、こんな人におすすめです

  • 綾辻行人のファン
  • ミステリー、新本格ミステリー、本格ミステリーのファン
  • ホラーもののファン
  • 学園もののファン
  • ミステリアスな美少女が登場する物語が好きな人

『Another』感想、考察(注意――ネタばれあり)

注意)『Another』、『十角館の殺人』のネタばれを含みます。両作品を未読の方は引き返してください。

 (本作は、2009年11月に早稲田大学のトークイベントで購入し、読了したのは09年12月でした。2010年に作成した記事を、今回一部手直ししました。)

 読みやすく楽しめました。

 行列のできるラーメン屋さんに本作を持って行き、並んでいる間読んでいました。並び始めた時点で400ページあたりまで読んでいたのですが、行列を待っている間に500ページあたりまで読んでしまい、続きが気になり、ラーメンを食べ終わった後、続きが気になり近くのマクドに入ってそのまま読み続け一気に読了。クライマックスシーンでは犯人の名前が見えてしまわないように、本の左側を紙で隠しながら読んでいました(笑)。

 Anotherがどんな小説か一言で言え、と言われると、個人的には……

「20年余の歳月を得て、『十角館の殺人』が学園ホラーの体裁をまとい、パワーアップして蘇った」といった感じでしょうか。

 人によっては、十角館よりも、学園ホラーものであることから「囁き」シリーズを、終盤に殺人鬼がでてくることから殺人鬼シリーズを連想されるかもしれませんね。

 しかし、本格ミステリ的な視点からいうと、核をなすのは十角館であり、十角館であることを学園ホラー、超常現象で巧妙にカモフラージュしている――と読めました。

『Another』と『十角館の殺人』の共通点

『十角館の殺人』との共通点を挙げると……

○2つの世界が舞台

『十角館の殺人』では、島と本土との2つの世界が交互に描かれてる。
『Another』では、学校内と学校外が、描かれている。

○メイントリックは名前に関するもの

『十角館の殺人』では、島ではヴァンダイン 本土では守須と別々の名前で呼ばれる人物が犯人であった。
『Another』では、学校内では三神先生、学校外(祖父母の実家)では怜子さんと呼ばれる人物が<死者>である。

○燃えるクライマックシーン

『十角館の殺人』では、十角館が燃え、『Another』では合宿先の建物が燃える。

……と、このように書きましたが、十角館の二番煎じだとか、十角館と対して変わらない、などと負の意味でいっているのではありません。物語性では十角館よりも遙かに豊かでしょう。学園もの、青春もの、モダンホラーとしても様々に楽しめます。

『十角館の殺人』が『そして誰もいなくなった』を土台にして新しい衝撃を演出した作品、というのなら、『Another』はその『十角館の殺人』を土台にして、更なる高見に到達した作品、といっていいのではないでしょうか。

『Another』表紙の謎?

あと、『Another』の表紙の謎(?)について思うことを述べます。
『Another』の表紙には本格ミステリ的な野心に満ちた試みがされている、と思うんですね。表紙に<犯人>=<死者>=<もう一人>のヒントが大きく堂々と記載され、また大胆にも叙述トリック使用宣言までがなされている――のではないかと。

叙述トリック使用宣言とは帯に書かれた「気をつけて。もうはじまっているかもしれない」という文言。
これは本文中では、鳴が、(三年三組にかけられた呪いはもうはじまっているかもしれないので榊原君も気をつけて)という意味合いでいったものですが、実はもう一つ重要な意味がありそうです。
帯の文言は、(作者から読者に対する仕掛け、即ち叙述トリックはもう始まっているかもしれませんよ。騙されないように気をつけて読んでくださいね)という意味もあるのではないか、と。
これは表紙に隠された大胆不敵な一種の<読者への挑戦状>とまで言えるのではないでしょうか。

考えてみれば、綾辻さんは『十角館の殺人』でも冒頭でエラリイの口を借りて叙述トリック使用宣言を行っています。
エラリイの最初のセリフに「僕にとって推理小説とはあくまでも知的な遊びの一つなんだ。小説という形式を使った読者対名探偵の、あるいは作者対読者の、刺激的な論理の遊び。……」とあります。
叙述トリックはネットで検索したりすると、一般的には「通常のトリックが犯人が探偵役に対して仕掛けるのに対して、作者が読者に直接仕掛けるトリック」などと定義されています。
エラリイがわざわざ、「あるいは」と述べて付け加えた「作者対読者の……」という文言には、(作者が読者に対して直接仕掛けるトリック=叙述トリックが使用された作品かもしれませんよ。気をつけてくださいね)という意味が含められていた、と解釈しています。

もちろん叙述トリック作品は、叙述トリックが使用されていることが事前にばらされると価値が減ります。
しかし、本格ミステリであるなら大胆に、かつ読者に気付かれないように伏線は張っておきたい。十角館では、本文冒頭に置かれていた叙述トリック使用宣言が、『Another』ではとうとう表紙に置かれるにまでなった……のではないかと。

表紙にはさらに<死者>=<もう一人>を指し示す大きな手掛かりがあると思います。

それは、ハードカバー単行本の表紙の『Another』のタイトル文字。
11/18付けのAyalistの日記にもあるように、Amazon、楽天、bk1とで文字の色が異なって見えますね。私の手元にある本でも、照明の角度や種類によって、文字の色が異なって見えます。
Anotherという言葉は日本語ではもちろん、「もう一人」という意味で、本作品最大の謎である<もう一人>=<死者>のことを指すタイトルでしょう。そのAnotherの文字が異なって見えるのです。
本格ミステリ的な意味合いとしては、Anotherは同じ文字なのに異なって見える→<もう一人>は同一人物であるのに読者には異なる人物のように見える、という重大なヒントではないでしょうか。(三神先生と怜子さんは同一人物であるのに、読者は別人だと思っていたでしょう)

『Another』表紙に描かれた女性は誰?

以下は表紙文字や帯と同様、あくまで私の個人的な解釈です(半ば無理矢理感のある解釈です)。

表紙に描かれた女性は 見崎鳴ではなく、三神先生(=怜子さん=<死者>=<もう一人>)です。しかも恒一に背中からツルハシで刺されて死んだ瞬間(あるいは直後)のものです。

普通に考えれば、左右違う色の眼をしており片方が蒼色であることから、ヒロインの見崎鳴でしょう。しかし、見崎鳴の瞳の色は、右目が漆黒、義眼である左目が蒼色(ハードカバー版のP141、15行)です。表紙の女性は右目が蒼色、左目が緑色であり明らかに異なります。また鏡に映ったものだと仮定すれば、左目が蒼色となり、左目の色に関してのみ見崎鳴と一致するのですが、右目の色が異なります。表紙の女性の髪は乱れており、女性の髪がこういう乱れた状態になるのは、まず思い浮かぶのは横になった場合であり、鏡をみている状態というのはちょっと考えにくい。鏡に映ったもの、という仮定は弱い気がします。

次に髪に注目します。後付のページにわざわざ描かれた髪の毛の意味は「髪の毛に注意してよく考えてください」という意味です。 

見崎鳴は髪の長さはショートボブ(P32、13行)であり、表紙の女性は伸ばすと胸もとぐらいまでの長さはありそうであり、ここでも明らかに異なります。

『Another』に登場した中で、唯一髪の長さが胸もとまであると記載された人物が三神先生(=怜子さん)です(P25、3行)。

また前述のとおり、表紙の女性の髪はかなり乱れています。加えて、この女性の顔や胸上部あたりの泥かなにかで黒々と汚れており、ただごとならぬ状態にも見えます。女性が横になって髪が乱れ、しかも泥かなにかで黒々と汚れているような場面は、本文中では、一つしかありません。クライマックスシーンで、炎上する合宿場の小屋の北側で、三神先生が、下半身が角材の下敷きになり地面に倒れ伏している(P642、12行)場面です。このとき三神先生の顔は、灰と泥で黒々と汚れた(P653、11行)状態です。

表紙が三神先生だとすると、三神先生は左右で瞳の色が異なる、ということになりますが、本文中にそのようなことは記載されていません。しかし、記載されていないからといって、そうではないということにもなりません。左右で瞳の色が異なるのは、医学的には虹彩異色症(オッドアイ、バイアイ)と言われるもので、ごくまれにこういう人はおり、おかしなことではありません。

なぜ、肩より上しか描かれていないかというと、胸のあたりまで描くと、恒一が振り下ろし胸をつきやぶったツルハシの先、あるいはツルハシによって生じた胸の穴が見えてしまうからです。もしかしたら、顔や胸上部の黒い汚れには、胸から吹き出て飛び散った血が含まれているのかもしれません。赤くないのは、泥水や灰と混ざったためか、<死者>が死ぬときの血だからどす黒いのか……。

ツルハシを振り下ろされたにもかかわらず無表情なのは、三神先生=<死者>であり、本来死んでいる存在であり、“死”に還った=本来あるべき場所に戻った、というわけで、痛さや苦悶をうかべる表情は必要ないからです。

野生時代連載時には「色の薄い髪」だった見崎鳴が「真っ黒な髪」(P32、13行)に変更したのも、もとの「色の薄い髪」だと表紙の女性が見崎鳴でないとすぐにわかってしまいそうだからでしょう。

また、叙述トリックの傑作小説の中には、例えば「I」とか「K」など(ネタばれを防ぐためイニシャルのみの記載しておきます)、表紙に真相のヒントが堂々と載っているような作品もあります。

そういうわけで本文中以外のもの、表紙、帯、目次、後書きなどにも何か仕掛けがあるんじゃないかな~と考えてしまうのです。

今回は以上です。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
URLをコピーする
URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる